エミレーツ航空

 先だって帝釈様の参道を歩きながら、ゲストのカナダからの留学生のエラさんと航空会社の話をしていて、エミレーツという名前が出てきたのですが、横文字に弱くものを知らない私にはわからず、柴又から家に帰って来て、買ってきたつくだ煮やお新香食べながらくつろいでいた時夫にその話をしたら、「ドバイの航空会社で、CAの帽子が変わっていて可愛いよね」と言って、エラさんと話が盛り上がっていました。

 あとでサイトでCAの素敵な制服姿を眺めながら採用条件を調べてみると、「21歳以上。爪先立ちで片手を伸ばした状態で、最低212㎝まで手が届くこと。英悟が堪能で丁寧な日本語を話せること。様々な文化背景を持った人々に対応できる。」などなどあり、前向き思考でチームワークを守りながら素晴らしいサービスを提供できる能力を持った人が求められ、グループディスカッションでは「架空の人物6名を二人一組のルームメイトにする」というお題が与えられ、国籍も年齢、性別も異なり、ムスリムもクリスチャンもいる中で、世界的なバックグラウンドを理解しているか、考察力・順応力が備わっているかをみられるとか、カッコいい職業に見えるけれど、いろいろなことを考慮しなければならないし、精神的にもタフでないと務まらないのでしょう。

 日本に短期留学しているゲスト達の話では、お仲間はフランス人、ドイツ人が多くて、国民性によって性格も違うし、いろいろ付き合い方も変えなければならないようですが、普段の暮らしの中でも多様性を持って暮らすということは、慣れが必要な所もある気がします。ずっと日本で暮らし、自営業の家庭で過ごしてきた私にとっては、還暦過ぎてエアビーの仕事を始め、何もわからず沢山の国の方々と接触して見て分かったことが、やって見なければわからないということでしたが、一期一会の外国人との接触はとても面白く、外国語を話すという制約は、想像する力や言葉以外で相手を思いやるという能力を高め、かえって楽に息が付けるということがわかって驚きました。世界は広い、感情は複雑だ、宗教も考え方も風習もみんな違う、失敗も多かったけれど、夫を始め沢山の人々に手伝ってもらってやって来て一番大切なのは、相手に対して愛情を持てるかだと思っています。

 御年89歳になられた女優の岸恵子さんが、八月に行うスペシャルトークショー『いまを生きる』の発表会見で語っていたことがとても印象的で、二十代でフランス移住を経験した岸さんは、自分の経験から昨今のコロナ禍やロシア軍によるウクライナ侵攻を憂慮していて、「日本というのは特殊な国だと思う。世界状況が分かっていて、分析もできる、ただ海に囲まれていて鎖国状態にあって、外に出ない。日本人は知識も分析力もあるけれどあまりにのんきに思える、感覚でわかっていても行動に出ない、なぜ戦争が終わらないのか、世界の人間の知恵を出すべきだ」「私はソ連人も知っています。スラブ民族の素朴さと良さがある。それが何もわからずに戦いにかり出されて死んでいくのは凄く哀しいことだと思います」と言っています。

 年を取って身体や頭脳の衰えを感じることが多いのだけれど、これまで考えてきたこと、感じてきたことをまとめた本を何冊か書いて、そしてそれができればもう未練はないという岸さんの生き方や考え方を、読むことが出来る日が待ち遠しいものです。