レゾン

 いやはや、年寄りの知らない世界というのはたくさんあるのだと、神戸で行われたアイスショーで宮川大聖君が歌った「レゾン」という曲を聴きながらつくづく感じています。式根島出身の彼はツイッターやインターネットサイトなどに歌など投稿しながら徐々に才能をあらわした、若者に人気の25歳のシンガーソングライターなのですが、今回のスケートとのコラボが衝撃的で、昨日私の頭にインプットされたばかりなのです。彼のオフィシャルインタビューを見ていたら、「生きる上で大事にしているのは、どれだけ自分を客観視できるかということで、いかに自分の言動を俯瞰的に冷静に見られるかということをずっとやって来て、大自然の中で育ったせいかもしれないけれど気が付いた時にはそういう性格になっていました。規模の大きい視点で物事を考えるのが今の生き甲斐になっています。自分以外の人がひとりでも幸せになれればいい。」とあり、25歳の若者がこんなことを言っていることに驚きながら、私は今まで何をやって来たんだとつくづく落ち込んでしまいました。式根島にいた時はネットも使えなかったけれど、東京に出てきてからはSNSや動画サイトを通じていろいろな活動をするようになり、歌もグーグルで<音楽作り方>と検索して調べて作り出すという、本当にZ世代の若者だなあと思うのですが、努力を重ねメジャーデビューしてから一年で武道館でライブコンサートをするまでになるのですから大したものです。

 今どきの早口のJ-popのようなレゾンという歌の題名は、哲学用語のレゾンデートルから取ったそうで、自身の存在理由、存在価値を意味すると知り、またまた私は脱帽してしまいました。でも何でこの世代の若者はこんなに達観しているのでしょう。アイスショーに参加した感想が彼のツイッターにあげられていて「楽しくて楽しかったです。あと、楽しかったです。」とあり、初めはちょっと違和感があったけれど、この男の子はこうやって言葉を紡いでいくんだなあ、それが魅力なんだとわかったのです。

 娘が七月に開催される、若手落語家の桂枝之進さんの寄席の券を取ってくれました。インタビュー記事を読んで見ると、「新しい文化の形を創りたい。僕は文化の役割は言語に近いと思っています。時代と共に必要とされるコミュニケーションの形が言語になったり文化と呼ばれたりする。だからこそ今の時代に、自分達に必要とされるコミュニケーションをデザインすることで、同じ時代を生きる人達の心の拠り所を作ることが出来ると考えています。」とあります。この若者たちが進んで行く道を守らなければならないと考えながら、どんな落語を語ってくれるか楽しみだし、こうやって刺激を受けられることがとてもありがたいのです。