レゾンデートル・カレイドスコ ープ feat. 初音ミク

 この年になって初めて知った”レゾン・デートル”という言葉を検索していたら、”レゾンデートル・カレイドスコープ”というサイトが出てきて、ツミキという方が作った歌をボーカロイドの初音ミクが歌っている映像を見ることができました。コンピューターで作られたヴァーチャルな歌手「ボーカロイド」は若い人たちの間で人気で、これはヤマハが開発した音声合成技術、およびその応用製品の総称で、メロディと歌詞を入力して、キャラクターに歌を歌わせる音楽ソフトの名称だそうです。ボーカロイドのキャラクターは、実際に収録した人の声をもとにした歌声で、「より自然な歌声を合成することができる」ほか、「ビブラートやこぶしなど、表情豊かな楽曲を手軽に作れる」のが特徴です。そして一般の人が音楽ソフトを使って作った曲を、ボーカロイドのキャラクターが歌うのですが、もともとコンピューターの歌声なので、原曲の歌い方に縛られず、歌う人がそれぞれの歌い方で歌えることが魅力です。

 でもその歌詞を見てみると、宮川大聖さんの”レゾン”のように、摩訶不思議なずしんと来る言葉が並び、使い方も特殊なのです。

 

間違さえ一つの答(アンサー) 踊れ 明日さえ不確な儘
美しく疑う君と 騙し騙され合って居たいのさ

かつて創った傷の跡を擦って 流れる時間を体感に変えている
現在よりも近くに視えた月の落掌を夢に
感情へ身を窶した日を憶えている

識りたいことも 識りたくないことも
識らないことも 識ってはいけないことも
何れが正解で何れが間違かなんて
識らないわ

鏡に映った君は今日も 形を変えて何に成るのだろうか
正しさを模した様な言葉で また切って貼って着飾っている

麗しく絡まった華弁は 何時か曇天と化するのに
鮮やかに DANCE DANCE
描く未来が繰る繰る廻った 煇りの中
何れだけ哀しくても 音が鳴止んでも
君が白紙に帰する迄 未だ手を繋ぎ合って居たいのさ

『錯覚は瞞しの産物、或いは上出来なトリックやマジック』
と多数票の嘲笑で正当化 今や孤独に成って仕舞ったのだ
色彩以外に差異は無いのに
一体何だってこうして触れられないのだろう?認め合えないのだろう?
かつての空の匂いや形状は食傷の知恵により木端微塵
今や何れも是も角張っている 頑張って頬張って威張っている
識った振りよりも 識らない振りが美学だなんて
識らないわ

鏡に映った君は今日も いのちを真似て何に成るのだろうか
侘しさを粧す様な言葉が また靄掛かって揺らめいている

間違さえ一つの答 踊れ 明日さえ不確な儘
是程に艶めく華弁は 何時か色彩を欠かすのに
鮮やかに DANCE DANCE
描く未来が繰る繰る廻った 煇りの中
何れだけ厭わしくても 忌み嫌い切っても
誰にも成れないのさ

幼い頃聴こえた声や 今にも掴めそうだった月は
本当は一つも無かったのかな 
孔雀が舞って眼が眩む

間違さえ一つの答 踊れ 明日さえ不確な儘
麗しく絡まった華弁は 何時か曇天と化するのに
鮮やかに DANCE DANCE
描く未来が繰る繰る廻った 煇りの中
何れだけ哀しくても 音が鳴止んでも
君が白紙に帰する迄 未だ手を繋ぎ合って居たいのさ
鏡に映った君は・・・

 

 早口の言葉と斬新な映像と共に作られるこれらは、もはや純文学のような気がするのですが、演歌や歌謡曲が土台の古い人間の私には、目のくらむような音楽なのです。ちなみに、カレイドスコープとは万華鏡のことで、「存在価値の万華鏡」ということなのでしょうか。

 今どきの若者たちが一番好きなゲームのことは、私にはどうもよくわからず、何がそんなに面白いのかといつも思っていました。でもこんなことが書かれているサイトがありました。

  若者は、正解をさがすまでの過程ではなくて、正解を見つけた「あと」に試行錯誤する。それは、現在のゲームは「解き明かすこと」ではなく「やりこむこと」を前提に作られているからだ。「効率重視で無駄を嫌う試行錯誤をしない若者像」とは真逆で、試行錯誤や無駄が嫌いなのではなく、「試行錯誤」するタイミングが大人たちとは違うだけで、答えを知って終わりではなく、その後手札が全部そろった状態でどう戦うか、答えをもらった後にどう応用するかで試行錯誤する人はたくさんいる。若者はコスパ重視ですぐに答えを知りたがるのでなく、知った後での応用で差をつける文化なのです。私はサラリーマンの家庭を知らないのだけれど、「とりあえず資料を作って」「まずは自分で企画を考えて」のように「答えを見つける過程で努力しろ」というのは若者には響かないし、何で情報をシェアしないんだというのです。努力するポイントが、「正解に至る過程」でなく「正解をもらった後」にあるだけで、答えを教えた後いろいろ試行錯誤するのかもしれない。

 世界はもうゲームオーバーしているのでしょう。だけれどクリアしたゲームを、若者たちは違う角度で、違う攻略法で、手札が全部そろった状態でどう戦うか、答えが出た後にどう応用するかを試行錯誤している。というか、もう切羽詰まった未来しかない若者たちは過去の人間たちが累々として積み上げた結果がゲームオーバーになった後の試行錯誤をしなければならないのです。タフでなくては生きて行けない時代がずっと続いていきます。