紗の着物

夏休みに入っているナギサちゃんとヤンママが久しぶりに遊びに来ました。ちょうどたくさん夏の着物がかかっていたので、ヤンママは紺地に赤の線模様が入っている紗の着物に可愛いピンクの柄の帯を締めて、ナギサちゃんが背景や足元の飾りつけをしてくれたスポットで、嬉しそうにポーズを取ってくれました。

 この前結婚式に参列するため着物を着て下さった方もそうでしたが、暑くて大変でしょうに、とても涼やかな顔をして、背筋が伸びてとても素敵な姿なのです。ヤンママは三宅一生の浴衣を着たナギサちゃんと私にお茶を点ててくれたのですが、袂が揺れて、何とも言えない風情があります。外をふと見ると、知り合いの和裁師さんがお孫さん連れて歩いて居るので、お声を掛けて中に入ってヤンママの着物姿を見てもらい、暑い中保育園から歩いて帰ってきた孫ちゃんにお菓子とスカイツリーの形をしたペットボトルの水をあげたら、とても喜んでくれました。

 各地から皆さまが送って下さる着物や帯たち、そして最近は義母の使わなくなったアクセサリーなども日の目を浴びるようになり、いろいろな場所で皆さんに褒められ、心が浮き立ったわとお客様に言っていただくと私も嬉しくて、これが着物の本当の在り方ではないかと思うのです。五十年間ずっとタンスにしまわれていた義母の若い時の着物たちが、船橋の着付け師さん宅に移動していきました。生徒さんや身内の方に着ていただき、そしてユーチューブデビューもするかもしれない、なんとワクワクすることでしょう。なぜ私のところにこんなに着物たちが寄せられるのか、それは、着物もそれを着る人達も、喜びを求めているからであり、ここで着物を着る一瞬がかけがえのない幸せに満ちているからでしょう。

 

 嬉しそうなヤンママも、ご両親の介護や御主人の健康など心配することもあるし、コロナ禍で制限されているナギサちゃんの教育や将来にも不安なことも多いようです。ゲストの外国人がたくさん来ていた頃は、綺麗な鮮やかな着物が人気で、まとって喜んでくれたけれど、今は日本人の方の需要が増えてきている気がして、お茶のお稽古に着て行く着物が三枚しかなくて、繰り回して着ているという若い方が、秋になったら行きますと連絡があったり、使うことを前提に着物たちが動いていきます。着物は所有するものではなく、まとって喜ぶものであり、お茶のお点前や踊りなど、目的があり技術を高める手助けになって、一緒に輝くものなのでしょう。

 暑くてめげているけれど、何かが静かに動いている気配があるし、若いアスリートたちは己を高めるため毎日頑張っています。それを見て励まされている私たちも、自分のできることを準備して突き詰めていかなければなりません。さあ頑張りましょう。