ひこうき雲   contrail

 昨日の日曜日はとてもいいお天気で、布団を干し、お風呂場の黒ずみにキッチンハイターをかけ、いろいろな所を掃除して、風を通しました。最近天気予報はあてにならず、昔の人は毎日の雲の様子などで明日の天気を予想するとあったけれど、明日の天気はと夫に聞くと、必ずスマホに手を伸ばして調べるので、あれあれと思ってしまいます。

 今朝起きて、そろそろ朝顔の種を取って枯れたところは取り除こうと玄関を開けて外に出たら、空を横切る立派なひこうき雲が目の入りました。大きい一本の飛行機雲は虹のように東の地平線から大空をしっかり横切り、西の地平線に入っていき、私は唖然として見ていて、朝顔の種を取るのも忘れ、急いで屋上に上がりました。

 ひこうき雲とは、寒冷で多湿の大気中を飛行する飛行機の航跡に発生する細長い雲で、主として、排気ガスが心核となって水蒸気が凝結してできる雲のことです。上空の気温は地上から約100m離れるごとに0.6度低くなるので、飛行機が飛ぶ高度数千mの空間ではマイナス数十度と極寒の環境となっています。この環境で、エンジンが周りの空気を吸って圧縮し燃焼させることで排気ガスとして排出し、その中に含まれる水分が急速に冷えることで雲にみえるようになるのだそうです。飛行機雲は、高度や上空の気温、空気の流れや湿度などあらゆる要因が絡んで出来ますが、それは飛行機雲が上空の空気の湿度が高い時に現れるからです。

 

 凄いなあ、こんなのを見るのはコロナ以後初めてだなあと思いながら、部屋に下りてパソコンでひこうき雲と検索すると、まず出てくるのがユーミンの歌についてばかりで、そういえば宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」のエンディングもこの歌だったことに気がつきました。若い時からその才能が光っていた松任谷由美さんは私と同じ年、今日国葬の安倍氏も同じ年、なんだか大変な年回りなのです。

 27日の二時から国葬が始まり、昭恵夫人は喪服の着物で遺骨を抱いて入場なさり、夫と二人でテレビを見ながら、これまでの業績、やってきたことの放映や、岸田首相の弔辞を聞きながらあらためて本当にいろいろなことを成し遂げてきたんだなと、しみじみ感じていました。そして菅義偉氏の友人代表としての弔辞は、もう誠実で、温かくて、真実を淡々と語るのを聞いて涙が止まらなくなりました。生命をかけて、日本の未来のために世界中を回って尽くしてきた安倍氏の一番良き理解者であり、同じ方向を見て努力してきた菅氏の言葉を聞きながら、何故国葬をしているのか訳が分かりました。

 外国から弔問に来ている外国の要人たちは、安倍氏といろいろな接触があり、より世界情勢を良くしようと頑張って来たのです。不条理や理不尽が世界を覆って居る時に、物事を正しく見る努力、人のために再生する努力をしないで、正義を捻じ曲げて誰の為にもならないことをしていたら、自分が理不尽な不条理に飲みこまれた時、その泥沼からぬけだせなくなります。

  

 四年前に来た中国系でアメリカに住む男女の双子の男の子のほうに、駅のホームを歩きながら突然 ”Do you like Shinzo Abe?"と聞かれたことがありました。この子は彼のtraditionalな姿勢が好きで、将来はドイツで政治の勉強をしたいというのです。そして私も”Yes!”と答えました。海外で評価されている安倍氏を、マスコミやアンチがいかに不当に叩こうとも、私は今日の菅氏の心からの正統な弔辞を聞き、海外の方々の追悼の姿を見て、国葬で良かったと思うのです。この危険に満ちた世界情勢の中で、日本にはこんなに世界の再生を考え努力し続けた政治家がいたということ、これからも次元を超えて彼のエートスや正義は残るだろう、それを指し示せたことが本当に良かった。狭い日本の中で”とんがり焼きの鴉”が突き合っていては、もう手遅れになる。安倍氏は身を持って、命を懸けてそれを示し続けたのでしょう。

 どんな国にもどんな時代にも戦いがあり争いがあり、自然災害もあって人々は逃げ惑っているのに、相変わらず欲にかられる権力者は顔を変えて現れ続け、そのうちだれが悪くて誰が悪くないなどわからなくなってしまいます。ロシアでは徴兵されないように国外に脱出したリ骨折して兵隊にとられないようにしようという話まで出ていて、いまこの不条理や、理不尽なことが襲うことの感覚を掴まないと、私たちは強くなれないのです。不条理を、理不尽を全部身に引き受けて、長いことかかって一人でそれと戦い続けて見えたものを、わかった人は提示し続けなければならない。

 人には、すべき時にすべきことがある。それは、その人がすべきことであり、他の誰かが代われるものではない。世界はとうに変わり目に来ています。独自の思想を持ち、スキル、感受性、表現力、鍛錬を重ね、感覚を研ぎ澄ます努力をし続けること。ひたむきな愛情と誠実さ、勤勉、穏やかさ、感謝、永遠の愛。今大切なことは何かということをできるだけシンプルに考え、悪の本体である文化的無気力、無自覚、無反省、無責任からは離れた場所に昇って行けばいいのです。

 実は私たちが生きている世界は、多次元世界であると言われています。例えば、現在私たちの地球が存在しているのは3次元の世界ですが、同時に5次元、11次元といったように、違う次元の世界も存在しているのです。私たちは今、縦・横・奥行きの3次元の世界に存在していますが、アセンション(魂の世界でいうレベルアップの意味)が起こると5次元の世界に行こうすると言われています。5次元の世界とは、現在の物質的な世界ではなく意識的な世界の事です。意識的な世界というのは、私たちが現在持っている「時間」や「空間」の概念を超越した世界で、5次元の世界では、行きたいと思えば、瞬時にそこに到達できるといわれている。5次元の世界では価値観も大きく変化し、物質的なものやお金は絶対的価値ではなくなります。今のこの世界は、人間同士でも人より抜きんでるために人を蹴落としたり、勝ち負けにこだわるあまり心が歪み、経済的には豊かになっても意識レベルが低くて豊かではない状態の人を多く作り出しています。でも意識や心の成長や上昇こそが、真の豊かさだと気づき始めている人が増えている。すべてが意識の問題なのかもしれない、五次元の世界で意識の核となるために、三次元の世界で彼は銃弾に倒れただけなのかもしれないと、私はあの時からずっと感じています。

 安倍さんが殺害されたのは不条理であり理不尽であるし、もうこの世にはいないけれど、違う次元の世界では存在出来る、そして有難いことは、この世界にアセンションできる遺伝子とできない遺伝子に分類されるということ、心が歪んで人を蹴落としたり意識レベルが低い人達は入れない世界だということです。頭は常に天を指し、いつも前を見据えて、人や世界を再生するためにはどうしたらいいか、やるべきことをやる。

 朝早くに見た、空を横切る大きなひこうき雲は何のメタファーだったのだろうと、昨日の夜ずっと考えていました。ひこうき雲を見ると運気が上昇するとか、気持ちが変化する前兆などと言いますが、正直なところ27日はどうなるか朝から気が重く、緊張していました。しかし、テレビで見ていて、菅氏の弔辞を聞いて深く感動した時、一人の人間が発した真実の言葉、人を謗ったりい貶めたりする顔のない人間ではなく、これまで自分達がやってきたこと、誠心誠意国を想い世界を想い考え抜いてきたことを自分の言葉ではっきり言ったことに、限りない深い安堵感を覚えたのです。

 私たちはまだまだ先にすすめる。ひこうき雲は消えてしまったけれど、飛行機はしっかり世界に飛んで行った。そのことを見届けたたくさんの参列者と参拝者の顔は、やさしさと決意に満ちて、感謝している。やらなければならないことが、たくさんあるのです。