イル・デーヴ  アンパンマンのうた

 平日の朝五時から放映されているクラッシック倶楽部という音楽番組をよく見ているのですが、50分番組をフルに見ることはあまりなくて、朝のルーティーンをこなすため動き回る時は消してしまってしまうことが多いのです。そんな中で、心を鷲掴みにされたコンサートがあり、固唾をのんで聞き入り、最後にはボロボロ泣いてしまったのが、総体重500キロという重量男性コーラスグループ”イル・デーヴ”さんの歌声でした。若いイケメンのコーラスグループは素敵なんだけれど年寄りの私には最近ピンと来なくて、初めを聞いただけでスルーしてしまいます。子供たちが小学校の時実力派の音楽の先生中心に作られたにママさんコーラスで歌ってから、十何年たくさんのコーラス団体で歌ってきた私は、合唱祭にやはり歌の大好きな母を招待して聞いてもらったとき、沢山の団体が同じ雰囲気で個性がなくて、飽きてしまったと言われたことがあり、プロでもアマでも心に染み入るものを作り出すということは難しいものだと感じていました。

 最近かなりふっくらしたゲストから問い合わせがあり、Plus Size womenの着物があるかということで自分の3sizeがきちんと記されていました。バスト1mは何とか普通に着物を着せることができたけれど、それプラス26㎝はかなり厳しく、振袖ドレスならなんとかできるから、ノーマルな着付けはできないけれどアレンジはできる、でもSorryと添えて返事をしたのだけれど、どこかできれいに着ることができたら嬉しいと思っています。そんなトラウマがある中で、朝聞いたイル・デーヴのふくよかな五人のメンバーの歌う声とピアノの音色は、今まで聞いたことのないような温かさと深さと包容力にみちあふれ、日本歌曲の後に「涙そうそう」「糸」「いのちの歌」と続き、ラストにテノール歌手が静かにゆっくりと『そうだ うれしいんだ 生きるよろこび たとえむねのきずが痛んでも』と歌いだした時、もうもう胸がいっぱいになり、あふれる涙をぬぐいながらずっと聞いていました。

『何のために生れて 何をして生きるのか こたえられないなんてそんなことは嫌だ』『今を生きることで 熱い心燃える だから 君は 行くんだ微笑んで』

 明日は五歳の男の子の七五三です。昨日着物をたくさん下さる方が、どうやったら嫌がる男の子に簡単に羽織袴を着せられるかアドバイスしに来て下さり、ご自分も三歳の男の子を残して亡くなった娘さんをお持ちで「うちとまったくおなじだよ」と言いながら、簡単に早く着せられるように教えてくれました。みんな辛い思いをしながらそれでも生きています。おばあちゃんも辛い、お父さんも辛い、そして五歳の男の子は無意識にもっとつらいのでしょう。『何が君の幸せ なにをしてよろこぶ わからないまま終わる そんなのはいやだ』『忘れないで夢を こぼさないで涙 だから君は飛ぶんだ どこまでも』それでも前へ進まなければなりません。夢を忘れてはいけないのです。

 イル・デーヴさんたちの歌声はどこまでも優しく、続いていきます。『時は はやく 過ぎる ひかる 星は消える だから君は行くんだ ほほえんで』今まで七五三の着付けをしてきて、綺麗にうまく着せることが一番大事で、きつくなくゆるくなくうまく着せようと頑張ってきました。今回は全く違う、コロナ後の七五三、難しい世の中で、そして難しいシチュエーションです。でも考えすぎず、刀が大好きで戦う気持ち満々の彼に、『そうだ 恐れないで みんなのために 愛と勇気だけが 友達さ』『たとえ どんな敵が 相手でも ああアンパンマン やさしい君は いけ! みんなの夢 守るため』と歌い続けて行けばいいのです。

 コンサートを聴きながらさんざん泣いた私は もう絶対泣かず、明日は地球外生命体がすきだという彼と、うちの屋上の人工芝の上で、戦っていこうと思います。それにしてもアンパンマンのマーチは、テレビのテーマソングで何回も聞いているのに、イル・デーヴさんの歌が全く違って聞こえるのは何故なのだろう、五人の体重が500㌔だからかしら、いろいろ大変なことも多いでしょう、健康も心配だけれど、何回も何回も聞き返したい歌を歌って下さることに、温かいピアノを弾いてくださることに、心から感謝しています。