フランスのメリッサ

 個性豊かなゲストが続きます。4月30日に一人で来たフランス人のメリッサは日本で買ったというちりめんの羽織を着てショートパンツに長い脚、ソバージュの髪型で、何とすらすら日本語を話すのです。お父さんが世界陸上の審判員で日本に来た時に一緒についてきて、それから日本が好きになり大学でも日本語を勉強しました。173㎝の長身にカラフルな振袖を着せようと思ってまず足袋を履いてもらうと足首に傷があり、肉腫ができるので切った傷が残り、それが何か所かあると言います。一緒に柴又へ行き、楽しくいろいろな話をして帰った後、テーブルの上にギリシアで買ったという指輪が置いてあるのに気がついた私は、連絡して翌日上野で待ち合わせ、無事返却しました。その日は彼女は上野散策の予定で午前中はノープランというので、まずデパートへ行き化粧品売り場を歩きながら、フランス語表記のものをみんな説明してくれ、北海道物産展では山羊ミルクアイスを買って(彼女がおごってくれました)屋上で食べながらスマホの写真を見せてもらいました。家族写真、おばあちゃんのうちでのクリスマスの様子、友達と行った様々な国の風景、でもフランス人のパパとカメルーン人のママは離婚していて、勤めていた会社では思い出したくないようなひどいいじめを受けていたことなどもポロっとしゃべってくれました。今はサーカスのポスターなどをデジタルで作っているデザイナーなのですが、結構いろいろ複雑な感情を抱えている女の子だということを感じていました。

 フランス人の家庭は離婚が多いと何かで読んだことがあるけれど、個というものが強い気がします。何が幸せで何が不幸かわからない世界、でも愛のない世界を破壊して、愛のある場所を創造していこうとしている。愛のない空間、愛のない組織、愛のない関係性は容赦なく滅ぼされてしまうけれど、たとえ周りの世界がどうであれ、自分自身が愛を能動的に創造していけばいい、誰かに愛を与えること、自分自身に愛を与えることを彼女は目指している気がします。

 混乱に満ちた世界から抜け出すには、これまで誰も語ったことのない言葉で、自分が心から信じられる物語を作っていくことしかない、人々の行き場のない怒りとか苦悩とかそういうものを何か表現で肩代わり出来て、自分の幸せではないかもしれないものが巡り巡って自分の幸せになるという感覚、自分ではない誰かの感情をすくい上げ取り込んでいくことが一番の救いになっていく。2日間彼女と一緒に過ごしていて、私はこんなことを感じていました。ゲストとの一期一会が、途轍もなく大きくなっていきます。