草野心平のひ孫

 春分の日に来た四人のゲストは、これまで来た中で一番ユニークで、有名な人たちでした。コロナ前に来た明るい香港のママからそのうち息子がガールフレンドと着物体験に行くと連絡があったけれど、いつかわからないでいて、初めに来たアジア系のカップルと話すうち、目のくりくりした男性が、香港ママの息子君とわかりました。一緒に来た黒髪で半分青く染めているアジア系の女の子は、ネパールと韓国のハーフで今はロスに住み「Freestyle Soccer World Champion」とのこと、ジャージーを着てサッカーボールの下がったバッグを持ってい入るのだけれど、なんだかよくわからず、とにかくサッカーが好きで10歳から始めたということだけをインプットし、結婚はしていないというので、最近頂いた黒い振袖を着せ、青地に金の竹の描かれた帯を締めました。ルーズに髪を上げてアイラインを目尻にくっきり引いた彼女はネパールの血を引いているからか韓国人ぽくなく、すっきり素敵なのですがアスリートだから体がしまっていて、あとからの反省で胸元とウェストをもっと補正すべきだったと思っています。

 電車が遅れていると連絡が入り、15分遅れで到着した問題ありのスペイン組は、従弟のアントニオが135㌔あるという連絡が来た時から心配し続け、お相撲さんの着物を探したり特大サイズを作れる京都のお店に問い合わせたりしたのだけれど結局駄目で、ひで也工房の紫の大きい浴衣を着せたら何とかなり、帯も同じトーンの素敵なものを締め、アニメやゲームが好きでおとなしめの彼は嬉しそうでした。お母さんが日本人でお父さんがスペイン人のメリーは四十代のフォトグラファー、写真は撮る方が好きで、菊の訪問着を着て私の秘蔵の総刺繍の帯を締め、日本人的な黒髪をアップにするのに苦戦し、やっと上げて髪飾りを付けたのだけれどお寺で取れて落としてしまい、探し回っても見つかりません。写真を撮る時に着物を着ていても座り込んだりしゃがんだり、構図やライティングにこだわアるタイプで、あまりに動くからヘア飾りも落ちてしまうのかもしれません。芸術家タイプの写真を撮るなと思っていたら、達者な日本語で突然「草野心平は私のひいおじいちゃんです」と言ったのに驚愕しました。今日は有名人がたくさんいる!アントニオにあなたも有名人?と聞いたら、温和にニコニコ笑いながら違うと答え、この頃から私たちは仲良くなり、メリーに習った通りの写真を撮らせてもらいました。音楽が好きでクラシックではベートーベンを好み、ピアノも独学で弾くというアントニオに帰り際歌を歌ってもらったら、綺麗な暖かい声でスペインの歌を歌ってくれ、内気でこもりタイプなのかもしれないけれど、いい人だなと思い、大相撲のカレンダーをプレゼントしました。

 午前中は晴れていたのだけれど、午後は天気が荒れだし、柴又から帰る時は雨に降られ、コンビニで傘を買って急いで帰宅、なんだかハチャメチャの体験になり、私は有名人たちに煽られっぱなしで、最後にサッカーパフォーマンスを少し見せてもらって感心しながら、翌日彼女のインスタを見ると素晴らしい動画があげられ、鍛え抜かれた彼女の姿にどんなに習練を積んできたのかと、感動しました。いろいろ大変だろうけれど、自分の道を自分で切り開いている優れた若者たちを見ていると、私も正道を貫いていかなければならないと思うのです。天は見ています。