ハリソン・フォード    2023年8月

毎日何でこんなに暑いんでしょう。今日来る予定だったパブロ君が、胃が痛くて治らないので、キャンセルすると連絡してきました。とても楽しみにしている彼だったから、可哀そうに思いながら、あと二人来る予定の40代の女性たちは大丈夫かしらと心配していると、お土産の袋をいくつか下げたブラックビューティーさんがドレッドヘアで華々しく登場、やはり女性は強いのです。

同じ職場で働く二人はボストンに住み、今日は浅草で日本人形やカップを買ってきて、十日間の休みを東京で過ごし、明日は富士山へ行き旅行終了、ショッピング三昧の日々だったそうです。独り者のジャスミンにまず振袖を羽織ってもらい、次に青い訪問着に白い帯を締めたら、170㎝以上あるすらっとした彼女はとても素敵で、でも時々妙な声を上げる面白いキャラクターです。

 ちょっと小柄なシェリルは初めとてもクールで、37歳、子供は女の子が三人で13歳が一番上のしっかりしたママで、やはりブルーの訪問着を着ていろいろ写真を撮るうちだんだんはじけてきました。お茶には興味がないようだけれど一応飲んでもらい、ジャスミンは顔をしかめて拒否したけれど、シェリルは作法のレジュメの紙を写メしていました。

 浴衣に着替えて外に出るとムッと暑く、汗を拭きふきお寺へ行くと、シェリルはそこらじゅうで写真を撮りまくって居ます。ジャスミンより肌の黒さが濃いので、私はなるべく明るい所で彼女を撮るように努力しましたが、帰り道アイスを食べながら歩いていると、子供用の浴衣はどこで買えるか聞いてきました。一応浅草と答えたら、何時まで営業しているか気にしていて、三枚買うことが使命のようです。三人の大きさを知りたくて、家族写真を見せてもらったら、旦那さんはハリソン・フォードのような方で、私はびっくりしてしまいました。彼女が23歳の時12歳年上の旦那様とバーで知り合ったそうです。

 うちに着くと、子供用の浴衣や着物が入っているボックスを見てもらい、赤いキティちゃんの浴衣、ピンクの長襦袢、そしてしっかりした青い着物を選んで帰りました。これだけのものをお店で買うのは大変だし不可能です。最近はメルカリに今どきの可愛い浴衣が出品されていて、今年の夏は子供連れのゲストが多かったから、こまめにチェックして何枚か買いました。おばあちゃんが孫のために成長に合わせて作った紺地のしっかりした浴衣は、今の東京ではどうしても暑くて、「松田聖子」ブランドの浴衣をついゲストの女の子に着せてしまう私ですが、今回シェリルがたくさん子供用の着物が入ったボックスを開けていろいろ取り出し、迷うことなく選択した姿を見て、お母さんの愛情を感じたし、未使用の子供用の長襦袢を可愛いと子供に着せた時どんな感じになるのかわからないけれど、今どきのファッションセンスの上を行くモノになるのかもしれません。

 

 ずっと前にノルウェーから来た中国人のママが最後まで無表情でいたのが、プレゼントのコーナーで好きな着物を持って行ってといった時、目が輝いて家にいる娘さんのために赤いウールの着物を選んで、それを持って私に抱き着いてきた時のことを思い出しました。やっぱり、着物は、日本の文化の本質は、 “愛”なのです。

 

 後日談 

  シェリルは家に帰ってから、三人のお嬢さんたちに着物を着せて、日傘をさしてポーズを取っている写真を送ってくれました。お姉ちゃんが左前に着ていて気になったけれど、まあいいかと思って「素晴らしい!」とメッセージを送りました。

 それからかなりたったある日シェリルからまたメールが来て、お姉ちゃんが学校で日本クラブ?みたいなものに所属していて、文化祭の時に日本についていろいろ調べて展示し、ブルーの着物を着ていろいろ説明している写真が添付されていました。あの母にしてこの子あり。シェリルの人間性というか考え方は凄いなと思うのです。だから旦那さんは好きになったんでしょう。今回は着物の着方の説明を書き、住所を知らせてくれればいろいろ日本グッズを送ると添えたけれど、Gメールはなかなか読まれることがないので返事は来ません。でもいつか偶然読んでくれたら嬉しいな、本当に面白いつながりができました。